宮沢和史さんに監修していただいた"Okinawan Sounds"、堪能していただけましたか? ここではそのモチーフとなったという民謡楽曲とその歌詞を、宮沢さんによる解説とともに紹介します。次回は沖縄を訪れて、ぜひ五感で沖縄民謡に触れてみてください。
白雲節(しらくむぶし)
沖縄民謡の中でもラブソング中のラブソング。「白雲のように見えるあの島のさらに向こうの島まで鳥のように飛んで会いに行けたら…。という想いを歌ったものです。今とは違い、島を一つ越えるのも容易ではない時代を想像し、聴いて感じてみてください。
民謡楽曲「白雲節」
♪嘉手苅林昌~ンナルフォン全曲~
白雲節(しらくむぶし)
白雲ぬ如に 見ゆるあぬ島に
飛び渡てぃみ欲さ 羽ぬ有とてぃ 羽ぬ有とてぃ
飛び鳥の如に 自由に飛ばりてれ
毎夜行じ行逢てぃ 語れすしが 語れすしが
我が思る無蔵や 白雲ぬ如に
見ゆるあの島ぬ なふぃんあがた なふぃんあがた
我がや思み尽す だきに思ゆしが
渡海ゆ隔じゃみりば 自由んならん 自由んならん
たとぅい渡海隔じゃみ 離りやい居てぃん
白雲に乗してぃ 思い知らさ 思い知らさ
一人淋々とぅ 眺む白雲ん
無蔵姿なとてぃ 忘りかにさ 忘りかにさ
ナークニー~カイサレー
ナークニーは沖縄民謡で最も代表的な歌。沖縄のみんなが共有できる節なんです。自分の好きな歌詞を載せることができ、各地でご当地のナークニーが生まれています。三線の弾き方は人によって様々ですが、みんなで合奏できる曲です。カイサレーはナークニーに続けて演奏されることが一般的です。
民謡楽曲「ナークニー」
♪松田一利~うたしゃみ~
ナークニー
※ナークニーの歌詞は即興のものが多いため、割愛させていただきます。
恋ぬ花(くいぬはな)
沖縄民謡といっても地域によって、大きな違いがあります。「くいぬばな」という八重山民謡が元歌です。沖縄本島では「恋ぬ花(くいぬはな)」というタイトルで親しまれています。三線のフレーズや節回しに八重山らしさを感じることができます。
民謡楽曲「恋ぬ花」
♪湧川明~うた②~
恋ぬ花(くいぬはな)
庭や雪降ゆい梅や花咲ちゅい 無蔵が懐や 真南風どぅ吹ちゅる
ぬがし我が庭や 梅や咲かなそてぃ 毎夜鶯ぬ 通てぃ鳴ちゅが
波之上に行ちゅみ 薬師堂に行ちゅみ なりし薬師堂や ましやあらに
波之上ぬ開鐘や 首里ぬ開鐘とぅ思てぃ 里うくちやらち 我肝やむさ
伊良部トーガニー
宮古島と伊良部島で暮らす恋人同士がそれぞれを想って歌った歌です。伊良部島と宮古本島は、4km以上離れており、当時にしてはものすごい距離。伊良部島で待つ女性が、「歩いて渡れる”渡り瀬”があれば 休める場所があれば 二人はいつでもすぐに逢えるのに舟の上でお休みをとりながら 海を渡って逢いに来てくださいね」と願いを込めて歌っています。
民謡楽曲「伊良部トーガニー」
♪宮國喜効~ようこそ「島うた」の世界へ2016~
伊良部トーガニー
サヨーイ 伊良部とぅがマーン 間がまんなヨー
ぱなりゆとぅが間がまんなヨーイ
渡す゜瀬ぬマーン 休す゜ゆ瀬ぬあてぃあなむぬヨー
サヨーイ 渡す゜瀬ぬやマーン 舟子だりゃヨー
休す゜ゆ瀬や水巣小だりゃよー
舟たどぅりマーン 水巣やたどぅり通い参ちヨー
サヨーイ 夕凪小んな イラヨかなしゃヨー
板戸小や音高かりゃヨーイ
鳴らんやどぅゆマーン むしる戸ゆ下ぎ待ちゅりヨー
伊良部トーガニーは行き来しやすくなることを願った内容です。長い年月が流れ、そこに伊良部大橋がかかりこの歌の願いは実現した形となった。だから、いずれこの橋を題材にした歌が生まれてきて欲しいなと期待します。時代時代の人々の営みを反映した歌が「民謡」だと思いますから。
音楽は見えませんし、触れませんし、時間が経つと消えてしまうもの。でも、想像力をかきたててくれる本当に素晴らしいメディアだと思うんです。
宮沢 和史 Kazufumi Miyazawa
1966年山梨県甲府市生まれ。THE BOOMのボーカリストとして1989年にデビュー。代表曲のひとつである「島唄」をはじめ、沖縄の音楽を取り入れた楽曲を多数発表。沖縄出身だとよく間違えられるほど、沖縄と深く関わりのあるアーティストとして知られる。